「ダウ理論」
言葉は知っていても、どんな理論なのか、正確に把握している人は案外少ないんじゃないでしょうか?
実は僕も詳しくなかったので、この前1週間かけて「マーケットのテクニカル分析」を読み、勉強しました。そしたらメチャ勉強になりました。
関連書評「マーケットのテクニカル分析」はトレーダーが読むべき絶対的教科書だった
そこで今回は、「ダウ理論」とはどんな理論なのか、どんな風にトレードに反映させればいいのかを書いていきたいと思います。ぜひ参考にしてみてください。
「ダウ理論」とは?
「ダウ理論」とは、チャールズ・ダウが提唱した考えが、さまざまな研究者によって整理されて作り上げられた理論。「ダウ理論」という言葉自体は、チャールズ・ダウが亡くなった翌年の1903年に誕生したそうな。
ダウ理論には6つの基本理念が存在します。
- 平均株価はすべてを織り込んでいる
- 市場には3種類のトレンドがある
- メジャートレンドには3つの局面がある
- 2つの市場平均を確認する
- 出来高でトレンドを確認する
- トレンドは明確な反転シグナルが出るまで効力を持つと仮定する
この理論は今も世界中で絶大に支持されています。
そして、ダウ理論が成り立つことを前提として、世界のトレーダーはトレンドラインや移動平均線などを利用しています。
※ダウ理論が成り立たないのならば、相場にトレンドは存在しないことになってしまう
では、6つの基本理念を詳しく解説していきます。
1. 平均株価はすべてを織り込んでいる
チャートの価格には、現時点で公開されている材料・予測できる材料のすべてが瞬時に反映されていきます。
例えば、過去の出来事、各国の政治情勢、国際情勢、経済状況、将来の予測、突然の自然災害などなど。
ですから、わざわざファンダメンタルズを追わなくても、チャートさえ分析すれば相場の方向性がだいたい把握できます。もちろん、重要な経済指標の前は警戒されて取引量が減るし、予想外の経済指標が発表されたら瞬間的に大きく変動しますが。
だとしても、もし自分の中でチャート分析の基礎が出来上がってしまえば、素早く相場の方向性を判断できるようになります。
2. 市場には3種類のトレンドがある
ダウは、相場を海の波に例えました。
- 潮:1年以上続く大きなトレンド(メジャートレンド、プライマリートレンド)
- 波:3週間~3ヶ月のトレンド(インターメディエートトレンド)
- さざ波:3週間に満たないトレンド(マイナートレンド)
イメージを図にするとこんな感じです。
大きなトレンドの中にも、上昇と下落があり、さらにその値動きの中にも細かい上昇と下落があります。どのトレンドでトレードするにしても、より大きなトレンドの流れに抵抗しないことが基本です(トレンドフォロー)。
もし仮に4時間足チャートを軸にトレードしようと思ったら、日足・週足チャートで大きな流れを確認し、その方向性に逆らわないようにします。そして、取引を始めるタイミングは4時間足より短い時間足を参考に、押し目・戻り売りを狙うということです。
理想はすべてのトレンドが同じ方向を向いている状態ですね。なかなか巡り逢えませんが。
3. メジャートレンドには3つの局面がある
トレンドには、3つの局面があります。
- アキュミュレーション局面:accumulation=蓄財。賢明な投資家が情報に基づいて買い集めている局面
- パティシペーション局面:participation=参加。トレンドを確認したテクニカルアナリストの大半が参入してくる局面
- ディストリビューション局面:distribution=流通。メディアでも取り上げられ相場は加熱し、投機筋と一般投資家が増える局面
こんなイメージ。
賢明な投資家は「ディストリビューション局面」で売り始めます。
2017年末の仮想通貨バブルでは、経済番組やミヤネ屋でもビットコインのことが取り上げられ、CMもバンバン流れ、多くの一般投資家がなだれ込みました。
多くの人が買い、皆が一斉に「まだまだ上がる!」と思い始めた時というのは、すでにほとんどの人が仮想通貨を購入し終わっているため、この後に続く参入者がいないことを意味します。だから上がらない。だから利確と損切りの嵐となり、バブルは崩壊する。投資を始めるなら「アキュミュレーション局面」「パティシペーション局面」を狙わないといけません。
4. 2つの市場平均を確認する
ダウは、世界初の平均株価指数を誕生させました。それが、9銘柄で構成される鉄道株と、2銘柄で構成される工業株です。銘柄の数はのちに増えましたが。
ダウは、相場が強気か弱気かを判断するには、2つ(鉄道株と工業株)の市場平均を確認し、両方の指標が一致しない場合は重要ではないとしました。
現在はダウ、ナスダック、日経平均、TOPIX、さらには業界別の市場平均があったりして、もう市場平均だらけ!これら市場平均を複数利用すれば、相場の状況をより理解できるようになるかも。
5. 出来高でトレンドを確認する
相場の方向性が出てきた時に、非常に重要になってくるのが出来高です。
上昇トレンドだったら、価格が上昇していくにつれて出来高は増え、価格が下がる時は出来高は減ります。
逆に、下降トレンドだったら、価格が下落していくにつれて出来高は増え、価格が上がる時は出来高は減ります。
出来高が増えていく時というのは、それだけ市場への参入者が増えて注目されていることを意味します。そして、多くの参加者が莫大な取引をする中で、トレンドが発生している状況というのは、確かな方向性だと判断できます。
綱引きに例えます。もし、僕と小学生が1対1で綱引きで勝負したとします。たぶん僕が勝ちます。しかし、小学生側に助っ人として急に室伏広治さんが来たらどうでしょう。僕は一瞬で負けます。相場も同じで、参加者が少ない時というのは、1人強い力を持った人が入ってきただけで、あっという間に方向が変わってしまうのです。
では、100万人 vs 100万人の綱引きだったらどうでしょうか。負けている側に室伏広治さんが参加しても、全体の力が大きく変わるわけではないので、逆転は難しいかもしれません。相場でも同じことが言えます。出来高が多いほど、そのトレンドは信頼できるのです。
だから、出来高は大事。
ただし、FX(為替)は、FX取引以外に、各国の貿易取引など把握しきれない出来高が存在するので、正確な出来高は分かりません。一応「On Balance Volume(OBV)」など出来高系のインジケーターはあるので、そういうのを使ってみてもいいかも。
6. トレンドは明確な反転シグナルが出るまで効力を持つと仮定する
トレンドが発生したら、そのトレンドは明確な反転シグナルが出るまで同じ方向に進み続けます。
その前にトレンドの定義を確認しましょう。
上昇トレンドの定義は高値&安値を切り上げながら価格を上昇させていくこと。下降トレンドの定義は高値&安値を切り下げながら価格を下落させていくこと。
この形が続く限り、トレンドは継続しやすいと考えられています。
これは、動く物体は外部から別の力が加わらない限り、方向を変えないのと同じだそうです。相場は、何か経済を動かす出来事や指標がない限りは、理由なく方向を変えることはないってことですね。
だからトレンドの途中にレンジ相場やペナントがあったとしても、基本はトレンドを継続させていくんだと考えておけばOK。
ヘッド&ショルダーやトリプルトップのように、反転パターンが作られ始めたら、警戒を始めます。
まとめ
「ダウ理論」は、そんなに難しい考え方ではありません。
ただ、それをいかにしてトレードに反映させたらいいのか、そのルール作りが難しいなと感じました。
- 押し目・戻り売りを狙っていくにしても、どのタイミングでポジションを持つのか(何をシグナルとしてトレードしていくのか)
- 転換パターンが現れ始めたと感じたら、パターンが完成する前 or パターンが完成した直後 or パターン完成後に進み始めたトレンドの押し目・戻り売り のどのタイミングでポジションを持つのか
- その時々のタイミングで、ポジションの数量はどの程度にするのか(リスク管理)
日々、試行錯誤ですな。