この前、Twitterで知った「マネーの公理」という本を読破しました。
amazonのレビューには酷評もあったので、購入しようか結構迷いましたが、読んでみたら、圧倒的に購入して正解でした。なぜなら、自分の投資に対するスタンスが間違いだらけだったことに気付けたからです。
投資をしていると、ついつい欲に負けた行動を取ってしまうことがあると思います。例えば、「まだ伸びると思って利確できない」や「損切りができない(ナンピンを繰り返す)」、「塩漬け」、「高値で掴んでしまった」などなど。
「マネーの公理」は、そういった投資に負ける人の行動や、投資に勝つための哲学を説明しています。実際に大損した人や、資産を失って自ら命を絶った人の具体的な話なども書かれていますから、「自分も注意しよう…」と感じることができます。
それでは、「マネーの公理」を読んだ感想を書き連ねていきたいと思います。
「マネーの公理」を読んだ感想
チューリッヒの公理は投資に慣れていない日本人必読だった
「マネーの公理」のサブタイトルは「スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール」。本の内容は、スイスの金融マフィア「チューリッヒの小鬼たち」の儲けの掟(チューリッヒの公理)が説明されています。
- 第一の公理(リスクについて):心配は病気ではなく健康の証である。もし心配なことがないなら、十分なリスクをとっていないということだ
- 副公理Ⅰ:いつも意味のある勝負に出ること
- 副公理Ⅱ:分散投資の誘惑に負けないこと
- 第二の公理(強欲について):常に早すぎるほど早く利食え
- 副公理Ⅲ:あらかじめどれだけの利益がほしいのかを決めておけ。そして、それを手に入れたら投機から手を引くのだ
- 第三の公理(希望について):船が沈み始めたら祈るな。飛び込め
- 第四の公理(予測について):人間の行動は予測できない。誰であれ、未来がわかるという言う人を、たとえわずかでも信じてはいけない
- 第五の公理(パターンについて):カオスは、それが整然と見え始めない限り危険ではない
- 副公理Ⅴ:歴史家の罠に気をつけろ
- 副公理Ⅵ:チャーティストの幻想に気をつけろ
- 副公理Ⅶ:相関と因果関係の妄想に気をつけろ
- 副公理Ⅷ:ギャンブラーの誤謬(ファラシー)に気をつけろ
- 第六の公理(機動力について):根を下ろしてはいけない。それは動きを遅らせる
- 副公理Ⅸ:忠誠心やノスタルジーといった感情のせいで下落相場に捕まってはいけない
- 副公理Ⅹ:より魅力的なものが見えたら、ただちに投資を中断しなければならない
- 第七の公理(直感について):直感は説明できるのであれば信頼できる
- 副公理ⅩⅠ:直感と希望を混同するな
- 第八の公理(宗教とオカルトについて):宇宙に関する神の計画には、あなたを金持ちにすることは含まれていないようだ
- 副公理ⅩⅡ:占星術が当たるのであれば、すべての占星術師は金持ちであろう
- 副公理ⅩⅢ:迷信は追い払う必要はない。適当な所に置くことができれば楽しめる
- 第九の公理(楽観と悲観について):楽観は最高を期待することを意味し、自信は最悪に対処する術を知っていることを意味する。楽観のみで行動してはならない
- 第十の公理(コンセンサスについて):大多数の意見は無視しろ。それはおそらく間違っている
- 副公理ⅩⅣ:投資の流行を追うな。往々にして、何かを買う最高のときは、誰もそれを望まないときである
- 第十一の公理(執着について):もし最初にうまくいかなければ、忘れろ
- 副公理ⅩⅤ:難平買いで悪い投資を何とかしようとするな
- 第十二の公理(計画について):長期計画は、将来を管理できるという危険な確信を引き起こす。決して重きを置かないことが重要だ
- 副公理ⅩⅥ:長期投資を避けよ
このように、12の公理と16の副公理から構成されています。ちょっぴり分かりにくい説明があったりしますが、全体的にガチクソためになりました。
内容も、実際に投資に失敗した人の話や、実体験に基づいた話が書いてあり、具体的で怖かったです。「こんな風に失敗したくない…」と思いつつ、誰もが陥りやすい失敗談、かつ、すでに僕も同じ失敗をしていたので、本当に読んで良かったです。
むしろ、この本を読まずに今後も投資をしていく自分を想像したら、恐ろしくなりました。「読んでなかったら絶対また同じ失敗を繰り返すなぁ…」って思いました。
投資は投機
「投資」は堅実にお金を増やしていくイメージ。例えば、長期積立のインデックス投資信託みたいな。
逆に「投機」はギャンブル性の高いイメージです。FXやバイナリーオプション、競馬みたいな。
でも、「どんな投資も投機である」とチューリッヒの公理は説いています。
まぁこれはなんとなく分かっていました。だって、インデックス投資信託をしてたって、始めるタイミングによっては含み損のまま終わるかもしれないし、将来どんな大暴落が待ち受けているのかも予測できないから。含み益が出ている状態でうまく利確できるかも分からない。だから「投資と投機の判断基準って人それぞれ感覚の違いなんだろうなぁ」とは思っていました。
ただ、今言ったように、投資と投機の境目が曖昧であることを、なんとなく「そうだろうな」と思っていただけで、確信はありませんでした。でも本を読んで「あ、同じように考えている人もいたんだ」と知ることができ、自分の感覚はあながち間違ってはいなかったんだと気付くことができました。
たぶん、これくらいのことは普段投機をしている人にとっては当たり前のことかもしれません。「自分もそう考えていたよ!」と言う人はたくさんいることでしょう。
でもチューリッヒの公理は、さらに多くのなんとなくをはっきりと示してくれます。そして、新たな気付きをいくつも教えてくれます。だから読んで正解でした。
これまで読んだ投資本の真逆を行く内容
僕はこれまでいくつかの投資本を読んできました。「難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!」や「インデックス投資は勝者のゲーム」、「マーケットのテクニカル分析」など。
で、今回「マネーの公理」を読んでみたら、これまでの本をことごとく否定する内容でした。
- 失ってもいいくらいの少額を賭けたところで一生金持ちにはなれない。少額賭けて勝ったところで貧乏は貧乏のまま。そんな勝負に意味はない。リスクを負わないと金持ちにはなれない。分散投資も安心感はあれど金持ちにはなれない。常に意味のある勝負をしろ。
- 利確は早く。「もっと上がるかも」「負けてもいいからもう少し待ってみよう」と欲望に支配された時点で負け。
- 損切りも早く。「あぁ、落ちてきた…、上がってお願い…!」「今さら損切りできない!ナンピン!」と祈り始めた時点で負け。
- 未来を予測できる人間は誰もいないから、「この人の言うことなら信じられる」と思っている時点で負け。その人の予測は今回たまたま当たっているだけに過ぎない。
- 「歴史は繰り返す」は嘘。たまたま似ているチャートを並べてドヤッてるだけ。テクニカル分析も嘘。お金の世界は常にカオスなのに、そこにパターンや法則性を見いだした時点で負け。
- 常にフットワークは軽く。何か1つの銘柄に執着したり、素早く利確・損切りできなくなった時点で負け。
- 楽観的な意見は常に大衆から支持されるが、楽観のみに支配された時点で負け。常にうまくいかなくなった時のことを考え、素早く損切りできる自信を持たないと地獄が待っている。
- 大多数の意見はだいたい間違っており、「みんながこう言ってるから」の判断で投資したら負け。
- 「これは長期投資だ」の発言をした時点で負け。「長期投資」の言葉には計画性があるように思えるが、不確定要素だらけの将来に計画を持ち込んだところで、なぜそれがうまくいくと自信を持って言えるのか?
チューリッヒの公理から言わせてみれば、なんとなくでインデックス投資信託を勧めている投資本、テクニカル分析を説いている投資本などは、すべて絶対視してはいけないのです。
「マネーの公理」のamazonのレビューには、「すべての投資が投機(ギャンブル)なら、じゃあ投資をするなってこと?作者が何を言いたいのか分からない」といったものがありましたが、これはチューリッヒの公理を理解していない。
チューリッヒの公理は、「相場はカオス」「人に頼るな」「投資は運要素がとても強い」と伝えているのだから、「こうすれば勝てるぞ!」などと明確に教えてくれるはずがありません。
その代わり、損切りを素早く行うこと(損小)、運が良くて納得いく利益が出てきたら素早く利確すること(利大)を暗に示しています。
「マネーの公理」vs「マーケットのテクニカル分析」
「マネーの公理」は相場はカオスだと言い、「マーケットのテクニカル分析」はチャートにはいくつかパターンがあってダウ理論なども存在すると言っています。
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僕自身もダウ理論は存在すると思っているので、最初は「マネーの公理も部分的には間違っているのでは?」と思いました。でもよく読むと「相場はカオスだが、そのカオスの中に見つけた法則性を妄信しなければ危険じゃない」と言っています。
なるほど。じゃあ、自分なりのルールに基づいて(ダウ理論を使ったり、トレンドラインを使ったりして)トレードするのはいいけど、「相場は常にカオス」「常に思い通りにいくとは限らない」ということを念頭に置いておかなければならないってことですね。
まぁ、そりゃそうなんだろうけど、ついつい自分のトレードがうまくいってしまうと、「自分のトレードは正解だ!」と思い始めてしまって、そのうち「このラインは割らないはずだ!」「ダウ理論に従ってここまで上がるはずだ!」のように妄信し始めてしまうことがあるから、だから人間ってのは難しい。自分をコントロールするのは難しい。
普通に、「常に早すぎるほど早く利食え」とか実行に移すの激ムズだから。
まとめ
読破後、内容があまりにも多く把握しきれなかったので、紙に要約を書き写して、整理しました。本も何度か読み返したいと思いました。
一方で、チューリッヒの公理は、その内容をただ知っているだけでは無意味だとも思いました。なぜなら、知っていることと、実行できることは別物だから。
相場の世界にいると、常に欲望が邪魔をしてきます。「マネーの公理」を読み終わった時、「あぁあ、投機をする時は感情を排除しないといけないんだなぁ。感情を無にする本とかあったら読みたいなぁ」と思ったほど。
また、読み終わった後にFXをした際、「ここから上がるはずなんだ!」「もう負けてもいいから一晩様子見しようかな」と思ってしまった場面がありました。でもこの思考は第二の公理と第三の公理に反するとも思いました。で、利益が出ているうちに利確…。翌日、「あれから上がっていたら嫌だなぁ」と思いながらチャートを確認すると、激下がり。今回の場面に関しては利確して正解でした。まぁ、チューリッヒの公理から言わせてみれば、たとえ上がっていたとしても素早く利確した行動は正解であって、後悔したところでそれは仕方ないことなんですけども。
何が言いたいかというと、チューリッヒの公理は、知っているだけでは意味がなく、実際に行動して実感することで、初めて日頃から実行に移せるようになるということ。多くの練習が必要だと感じたんです。
チューリッヒの公理を実行できるようになれば、一発の負けで破滅することは避けられるので、これからも練習に励もうと思いました。