暗号資産投資にはさまざまな誘惑があります。その1つがレンディングです。
せっかく”アルトコインで一発逆転”というギャンブル行為の呪縛から解かれてビットコイン一筋になったとしても、今度はレンディングの誘惑に駆られることがあります。
レンディングというのは、取引所やレンディング事業者に自分の暗号資産を一定期間貸し出すことで、年利数%の報酬が得られるサービスです。
「どうせ長期保有目的でビットコインを持っておくならレンディングで運用したほうがお得じゃん!」と考える人もいると思いますが、僕は反対です。絶対やめたほうがいい。
今回は、僕がレンディングをしない理由を説明していきたいと思います。
レンディングの魅力とは?
例えばコインチェックの『貸暗号資産』
年率が最大5%ですから、もし1年間1BTC貸していたら1年後0.05BTCが利用料として受け取れます。
貸した時点で1BTC=400万円だとして、1年後も価格がそのままなら0.05BTC=20万円。でも1年後にビットコインが値上がりしてて1,000万円とかになっていたら0.05BTC=50万円です。さらに1BTC=2,000万円になったら…?
ビットコインガチホ組がレンディングをすれば、現在持っているビットコインのキャピタルゲインに加えて、レンディングによる利用料(インカムゲイン)、さらにその利用料のキャピタルゲインの恩恵を受けることができます。
さらにレンディングで得た利用料を追加でレンディングに出すことができれば複利効果も得られます。価格が暴落して停滞相場の時もコツコツとレンディングでビットコインを増やせば、また次上昇があった時により資産を増やすことができます。
ビットコインの上昇はものすごいので、レンディング×バブル急上昇の合わせ技はとても魅力です。

そう考えるとビットコインを持っているだけってもったいない気がするよね
ビットコインレンディングの危険性・デメリット
貸し出すだけで利益が得られるレンディング。しかし、そこには大きなリスクも潜んでいます。
レンディングで貸し出した暗号資産は分別管理ではない
日本の取引所で購入した暗号資産、自分の口座に入金した暗号資産などは分別管理の対象となっています。要するに、顧客の暗号資産の大部分はコールドウォレットで管理(ネットから切り離して保管)されているので、ハッキングリスクが低く安全です。そのため、取引所が破綻したとしても分別管理されている暗号資産は無事なので顧客に返還されます。
しかし、レンディングサービスで貸し出した暗号資産は分別管理ではありません(コールドウォレットで管理されていない)。レンディング事業では借りた暗号資産を動かして運用していますから当然です。ということは、取引所がなんらかの理由で破綻すればレンディングで貸している暗号資産は返ってくる保証がないのです。
レンディングというのは、目先の数%の利益のために、貸し出した暗号資産すべてを失うリスクを負う行為だと理解しておく必要があります。
レンディングで貸し出した暗号資産の用途が不透明
なぜレンディングで暗号資産を貸し出すと利用料がもらえるのか?
その理由は、取引所やレンディング事業者が借りた暗号資産を別の顧客や企業に貸し出すなどして運用しているからです。
例えば『暗号資産FX』のサービスを提供している取引所では、FX取引したい顧客にレンディングで貸してもらった暗号資産を貸し出すことで、その顧客はレバレッジをきかせてFX取引(元手の数倍の資金で取引)ができます。
すると、取引所はFX取引をする顧客からレバレッジ手数料を得られます。
そしてそのレバレッジ手数料の中からレンディング利用料を貸し手に支払います。
ただ、レンディング事業で借りた暗号資産の運用方法はほかにもたくさんあります。
ほかには、ベンチャー企業やヘッジファンドに融資したり、といったことも。
ひどいのは、運用成績が悪くなればレンディング報酬を貸し手に支払うため、新規顧客から資金を集めてそれを支払いに企てようとするレンディング事業者がいたことです(ねずみ講状態)。
※レンディング企業「セルシウス」がバーモント州の証券規制当局からこのように指摘されている
と、このように運用方法はいろいろありますが、どのレンディング事業がどんな運用方法をしているかは不透明です。年利8~10%など高利回りがウリのレンディング事業者は、それだけの使用料を支払うためにどんなリスクの高い運用をしているのか…?
レンディングサービスを使うことで、自分の大事な資産を大きなリスクにさらしていると考えると怖いですよね。
過去に数々のレンディング企業が破綻している
レンディングサービスで暗号資産を集めて運用というのは、銀行も同じようなことをしています。
普段私たちは銀行口座にお金を貯金していますが、銀行はその残高に応じて企業に融資したり、個人(リテール)向けに住宅ローンを提供したりしています。そして銀行は融資した対価として利息を得て、さらにその利息の一部を私たち預金者に利息として支払っています。
ただ、暗号資産の相場は浮き沈みが激しく、業績が悪化し出金停止、破綻するレンディング企業も多いです。
過去に破産したレンディング企業↓
- クレド(cred)(2020/11/7破産):高い利回りを提示しなければ資金を集められないような信用度の低い企業に貸し付けていたらしい。
- ボイジャー・デジタル(Voyager)(2022/7/5破産):ヘッジファンドのスリー・アローズ・キャピタル(3AC)に無担保ローンを融資していた。しかし3ACは保有していたGBTC・stETHの含み損に加え、LUNAトークンの暴落で追加融資を受けることができなくなり破産。3ACに融資していた資金が返ってこずボイジャー・デジタルも破産。
- セルシウス(Celsius)(2022/7/13破産):ポンジスキーム疑惑。独自にCELトークンを発行し、顧客から預かった資産を使って価格つり上げも?
- ブロックファイ(BlockFi)(2022/11/28破産):融資先の3ACが破綻し資金が返ってこず、米SECへの罰金支払いでも苦しむ。追い打ちをかけるように相場は低迷し、暗号資産を貸し出すユーザーは減少で利益も減少。それを受けて貸し手へ支払う年利を引き下げるなど対策するも資金難は続く。FTXの姉妹会社アラメダリサーチから融資してもらって助けてもらうも、アラメダリサーチ自体の資産がFTXのFTTトークンに依存しており、さらにFTTトークンを担保にしてFTXから借り入れを行うなど不安定な状況(しかもFTXは顧客資産を勝手に流用)。アラメダリサーチの財務状況を問題視したBinanceのCEO CZが保有していたFTTトークンを売却し、FTXとアラメダリサーチは窮地に追い込まれ破綻。助け舟(アラメダリサーチ)を失ったBlockFiも破産。
- ジェネシス(Genesis) レンディング部門(2023/1/19破産):3ACの破綻により融資していた資産の回収ができなくなり財政難。さらにFTX破綻により預けていた資金を失う。警戒する顧客は資金を引き揚げるので、その資金を用意するのにも苦しむ。やがて破産。
高利回りを謳うレンディング企業は一見魅力的ですが、そのサービスを維持するためには継続的に多くの利益を確保する必要があり、そのために常に大きなリスクを負って運用を行っているんだと考えておかなければなりません。
また、1つの企業の破綻がほかのレンディング企業にも悪影響を及ぼし、連鎖的に破産していくリスクがあるのも怖いところです。
レンディングはリスクに見合ったサービスではない
ビットコインは持っているだけではインカムゲインを生みません。できることなら今ある資産は減らさずに金利(配当)を得たいという欲はあります。
しかーし!そのためにせっかく集めたビットコインをすべて失うリスクを負っていいのだろうか…。

そう考えた時、仮にレンディング企業が破綻してビットコインを失ったら絶対に後悔するのが目に見えたよ…
じゃあ一部を貸し出すのは?

一部でも、結局ビットコインを失ったらとてももったいない。キャピタルゲインだけでも十分なんだから、わざわざリスクを負う必要なんてないんじゃないか
なら、長期でレンディングするんじゃなくて、数ヶ月だけ高利回りのレンディングサービスに預けてすぐ資金を出金して、レンディングで得た報酬分だけを引き続きレンディングするのは?

運悪くその数ヶ月の間でレンディング企業の破綻を食らったら悔やんでも悔やみきれないでしょうよ…
そして怖いのは、欲望には際限がないこと。一度レンディングに手を出して報酬を得る快感を得てしまったら、止まらなくなってしまいます。次もっと魅力的なサービスが出てきたら利用してしまうかもしれません。
それは痛い目を見るまで止まらないでしょう。
預け先の破綻リスク、ハッキングリスク、送金時のセルフGOXリスク、詐欺にひっかかるリスクを負うことになるのです。

そんなん嫌すぎるー
やめとけ
と、ここまで、「もし僕が家族や友人に暗号資産レンディングについて聞かれたらこう答えるだろうな~」という体で書いてみました。
失っても「仕方ないか」と諦められるなら別にやってもいいと思います。でも欲かいて資産の大部分を預けるような無茶なことはやったらアカンと思う。